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「クリスマス・キャロル」

「クリスマスキャロル」
 
チャールズ・ディケンズの「クリスマスキャロル」とは、内容が違いますが、クリスマスの時期になると、必ず思い出す「事件」があります。
 
事件というほど大げさではないのですが、自分にとっては事件でした。
それが、なぜか、クリスマスキャロルと繋がっています。
 
NYCに居る頃に、毎日呑んでいたビールの空き缶が室内に山のように溜まってしまいました。
近所のスーパーで空き缶を回収してくれるという話を聞いて、90Lほどの、ばかでかいゴミ袋2つにパンパンに詰め込んだビール缶を背負って、そのスーパーに出かけました。
 
まるでサンタクロースの風体でした。
 
スーパーの裏手に、空き缶買い取り窓口がありましたが、そこには、その頃、NYC史上、その数が最多だと言われていたホームレスたちが並んでいました。
 
ちょっと見ただけで、ほとんど黒人だということが分かりました。
 
仕方なくその列に並んでいると、自分の番が来ました。
ところが、買い取り担当は、
「あなたのは全て500ml缶だよね。残念ながらここで買い取るのは350ml缶だけです」。
という冷たい対応。
 
すると、真後ろに並んでいた小柄な黒人の老人が、
 
「俺だったら買い取ってくれるところを知ってるゼ」と自慢げな表情。
 
「そこ、どこ?」
 
と私が聞くと、
 
「ここから30分くらい歩いたダウンタウンにある」
 
という返事。
 
こんな、ばかでかい袋を2つも担いで30分も歩くことを考えたら、もう、どうでも良くなり、
その老人に、
 
「これ、全部、あんたにあげるよ」
 
と袋を差し出したら、その老人、
 
「おー、ジーザス!、あんたはなんて素晴らしい人だ。夢みたいなプレゼント。ありがとう。ありがとう」。
と、自分が全く予想もしていなかった感謝の反応に驚いてしまいました。
 
私が、
 
「感謝にはおよばないよ」
 
と言って、その場を立ち去ろうとすると、
 
その老人、私のコートの裾を引っ張って、
 
「俺は嬉しいけど、あんた、今日の生活はどうするんだい」?
 
最初は、何言っているんだろう?と訝りましたが、
 
すぐに、「ああ、きっと自分の事をホームレス仲間だと思って、自分の生活の心配をしてくれたんだな」
 
と分かりました。
 
しばらく、長いホームレスの列の脇からその老人の嬉しそうな様子を見ていましたが、次第に胸が熱くなるのを感じました。
 
その老人は、その年の冬を多分越せなかったと思います。
多くのホームレスが寒波が来ると凍死していた時代です。
 
そんな老人が、得体の知れない東洋人のその日の生活の心配をしてくれたことに驚きました。
 
おそらく、生まれた時から、貧乏で、差別され、虐げられ、社会の底辺で生きてきたと思います。しかし、どこから、そのような思いやりの気持ちが出てくるのだろう?
と、不思議な気持ちになりました。
 
その後、ずっと、その老人のやさしそうな目と表情を思い出していたら、
 
「ああ、きっとあの老人は母親からとても愛されて育ったに違いない」
という自分なりの確信を持ちました。
 
欧米では、そのような人に出会うと、きっと、「キリストがこの世に現れたのよ」と言います。もし、そうだったら、老人の母親はマリア様です。
 
そんな、自分の妄想と、クリスマスキャロルとマッチ売りの少女の話が、ごちゃまぜになっている、クリスマス・イブです。
 
キリストは貧しき大工、ヨセフの子供。
 
華やかな現代のクリスマスとは対極にある、キリストの誕生です。
 
一応、洗礼を受けている自分は、クリスマスイブは、いつも静かに、いろんな事に思いを馳せて過ごしています。
 
メリー・クリスマス!

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